妊娠中のインフルエンザワクチンについて

当院では5年前から妊娠中のインフルエンザワクチンの接種を推奨してきました。
これは、今回の新型インフルエンザ同様、季節性インフルエンザも妊娠中の免疫的寛容、体の生理的変化により重症化しやすいことが海外では以前から指摘されているからです。

国立成育医療センターの妊娠と薬情報センターのHPからの記事を抜粋します。
ご参考にして下さい。

現在日本で使用されているインフルエンザワクチンは不活化ワクチンです。
  妊娠初期のインフルエンザワクチン接種の催奇形性に関する大規模な疫学研究はひとつあります。妊娠4ヶ月までにインフルエンザ不活化ワクチン接種を受けた母親から生まれた650人の児において、大奇形、小奇形の発生率は増加しなかったと報告されています(Birth Defects and Drugs in Pregnancy, 1977)。他にも第1三半期に不活化インフルエンザワクチン接種を受けた子どもにおいて先天奇形発生率の増加は認められなかったとの小規模な研究による報告があります(J Infect Dis 140(2):141-146, 1979, Am J Obstet Gynecol 140:240-245, 1981)。
生ワクチンではないので重篤な副作用は起こらないと考えられ、一般的に妊娠中のすべての時期において安全であるとされています。
  妊娠中のインフルエンザウイルス感染は、重度の合併症や入院のリスクを高めるとの報告があります(Am J Epidemiol 1998;148:1094–102, Br J Obstet Gynaecol 2000;107:1282–9.)。アメリカの予防接種諮問委員会Advisory Committee on Immunization Practices(ACIP)による勧告では、インフルエンザシーズン中に妊婦である女性のインフルエンザワクチン接種を妊娠週数に関わらず推奨しています(MMWR 2009, Vol. 58 RR-8)。


  妊娠中は胎児を免疫学的に寛容するために、母体の免疫機能は低下傾向にあり易感染性です。さらに、妊娠初期では悪阻による体力低下、中期以降は子宮の増大による他臓器への圧排所見の1つとして横隔膜の挙上による肺活量の低下、循環血漿量の増大による心への負荷が加わり心肺機能の低下がみられます。これらのことから、妊婦はインフルエンザ感染症に関しては感染しやすくさらに重症化しやすい身体状況にあると考えられ、積極的なワクチン接種が世界的に勧められております


  国立成育医療センターでは、妊娠中のワクチン接種による母体の免疫獲得能力、出産までの免疫持続力、赤ちゃんへの免疫移行に関し研究させていただいております。前述のとおり母体の免疫機能は低下傾向にあり、ワクチンによる免疫獲得能力が妊娠していない時より低下することが心配されておりましたが、現在までの当院での研究の結果からは、不活化インフルエンザワクチンは妊娠中の免疫の変動に関係なく約90%が免疫を獲得することが可能で、全ての時期でワクチン接種は免疫獲得に有効であることが想定されました。ワクチン接種後に獲得された免疫は少しずつ低下しますが、出産時にはまだ感染防御に十分とされる免疫力が残っており、さらに母体の免疫が胎盤を介して児へ移行することにより、出産した赤ちゃんも出生時に既に感染防御に十分な免疫を獲得していることが証明されました。また、2002年の開設以来シーズンあたり150人前後の妊婦さんがワクチン接種を受けていますが、副反応、胎児への影響もみられておりません。従って、妊娠中のインフルエンザワクチン接種は母子ともに有用なワクチン接種と考えられます(J Med Virol 2009, in press)。


以上からも当院では新型、季節性のインフルエンザワクチンについて、今まで通り妊娠中の積極的な接種を推奨していきます。

by booska1958 | 2009-09-21 01:11 | インフルエンザ関連情報 | Comments(0)

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